🔰 乃木坂46を知る
個人PVとは
乃木坂46というアイドルグループを特徴づけるもののひとつとして「個人PV」というものがあります。
乃木坂46がシングルをリリースする際に、楽曲MVの他に、特典としてメンバーひとりひとりを主演としたショートムービーが制作されることがあります。特に、デビュー直後しばらくはシングルが制作されるたびに在籍メンバー全員分のムービーが作られており、このショートムービーのことを個人PVと呼んでいます。
個人PVと言っても、必ずしもメンバー紹介のような内容にはなっておらず、その映像作品を仕上げる監督の作品性に振ったものも多くあります。メンバーにとっては、そういった様々な映像作品の主演を務めることで、意外な魅力が発揮されたり、自らの適性を探る機会にもなっています。
MdN EXTRA Vol.3 「乃木坂46 映像の世界」で乃木坂46の個人PVの分析を担当したライターの香月孝史さんは、乃木坂46の個人PVについて以下のように述べています。
「アイドルのCDに特典DVDがつくのはスタンダードですが、その内容はMVやライブ映像、ドキュメンタリーなどであることが一般的です。ただ、乃木坂46はシングルCDの特典映像に、そのシングルに参加しているメンバー全員分のオリジナルPVを制作し収録しています。毎回30本以上にもなるそれらの作品群は、原則としてすべて別々のクリエーターが監督を務めていますが、作品のスタイルや方向性は各監督にゆだねられているため、担当するメンバーへのアプローチも作品ごとに大きく異なります。アイドルとしてのパーソナリティを前提にして撮影するものもあれば、フィクションとして1人の少女のドラマを撮る作品もあったりと、各クリエーターの世界観が投影され、アイドルのプロモーション映像というだけでない、幅広い作風のショートフィルムの見本市のようになっているのが特徴ですね」
(Real Sound 乃木坂46、個人PV復活の意義とは? グループの躍進支える企画の重要性)
個人PVの女王
この個人PV語るうえで外せないのが1期生の伊藤万理華さんです。彼女は選抜常連とは言えないメンバーでしたが、ダンスや演技の高い能力が支持されることも多く、ファンの間では「個人PVの女王」と呼ばれています。
5thシングル「君の名は希望」の特典映像として作成された伊藤万理華さんの個人PV「まりっか’17」が好評を得て、乃木坂46ファン以外にも広く波及しました。
約4年後の17thシングル「インフルエンサー」では、「まりっか’17」の続編である「伊藤まりかっと」が作成されました。監督は「まりっか’17」と同じ福島真希さんが担当しました。
そして、卒業を決めた伊藤万理華さんが最後にファンへの思いを伝えるために選んだ手段が「映像」でした。監督は福島真希さん以外に考えられず、伊藤万理華さん本人から直接オファーしたそうです。そして完成したのが「はじまりか、」です。
撮影は長回しの1カット。舞台は乃木坂駅周辺で、伊藤万理華さんがダンスを交えつつ語り口調の歌を歌いながら自身が乃木坂46に合格したときの最終オーディションが行われたソニーミュージックエンタテインメント乃木坂ビル(当時)目指して歩いていきます。
そしてその歌詞は、彼女のアイドル人生の葛藤がつづられ、「見つけてくれてありがとう」というファンへの感謝と、ここから始まるという決意が示されています。
この映像は当初、伊藤万理華さんが開催した個展「伊藤万理華の脳内博覧会」のみで上映されていたものでしたが、その後、YouTubeで公開され2023年6月現在で640万回以上再生され、「泣ける」「定期的に聴きたくなる」などの感想が並んでいます。
ちなみに「『はじまりか、』以上の作品はもうできないんじゃないか」と思った福島さんは、伊藤万理華さんの乃木坂46卒業を機に監督をやめて、現在は香川県に住む専業主婦となっています。
【公式】伊藤万理華「はじまりか、」
乃木坂46にとっての個人PV
個人PVは、初期から映像や演技にこだわってきた乃木坂46の特徴的な活動の一貫として継続されており、新たなメンバーの適性が見い出されたり、ここでのクリエーターとの出会いから、その後の仕事につながっていったりと、乃木坂46の財産にもなっています。
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