得意なこと、苦手なこと
例えば学校では、英語のテストが70点、数学のテストが30点だったとすると、数学の点数を上げるよう指導されます。
日本の教育はどの教科もまんべんなくできることを求めるので、「得意なことを伸ばす」よりも「できないことを失くす」ことに注力されがちです。
アイドルに求められるものとしてはルックス、スタイル、歌、ダンス、トークなど様々ありますが、全てにおいて満点が取れる人はなかなかいないでしょう。
そういった中で、思うような結果が出ない場合などでは「自分には何が足りないのか」と悩んでしまうこともあるようですが、これは日本の学校教育の影響なのかもしれません。
しかし「歌50点+ダンス50点」の人と「歌90点+ダンス10点」の人がいたとすると、合計が同じ100点であっても「歌90点+ダンス10点」の人の方がアイドルとしては魅力的ではないでしょうか。
乃木坂46の総合プロデューサーである秋元康さんも、いくつかのインタビューで「記憶に残る幕の内弁当はない」と答えていて、美味しいおかずを少しずつ集めるよりも、他と明確に差別化できる単品があるお弁当の方が魅力的だと述べています。
弓木奈於さんのバラエティ力
弓木奈於さんは、4期生の中では年齢も上の方で、京都出身で7人兄弟の上から2番目ということもあり、当初は「おしとやかなお姉さん」を目指していましたが、毎週金曜日にFM FUJIで放送されている「沈黙の金曜日」で、1期生の中田花奈さんから引き継ぎ2020年10月よりアシスタントMCに就任すると、共演しているアルコ&ピースの酒井健太さんが弓木さんの不可思議なトークを(意味不明として話題となった)映画になぞらえて「テネット」と形容し、ファンからは「弓木ワールド」と呼ばれるなど、そのバラエティ能力が認識されていきました。
南海キャンディーズの山里亮太さんも、自身がMCを務める「プレミアMelodiX!」(テレビ東京)で弓木さんと共演した後日のラジオ番組で、「面白かったなぁ。もう何言ってるか訳分かんないのよ、言葉の外し方とかが絶妙で」「どんどんとブレイクするんだろうなと思った」と、弓木さんの独特なエピソードトークや言語感覚について語りました。
弓木家は7人兄弟の大家族で、本人曰く「私が家族の中で一番普通なんです」とのことで、ラジオに電話出演した際の母親や、乃木坂46のYouTubeチャンネル「乃木坂配信中」で配信された「弓木が京都に帰省するので撮ってきてもらいました!」に写っている家族の様子を見ると、彼女のバラエティ力は、母親譲りであり家族の中で培われたものなのかもしれません。
(【公式/乃木坂配信中】弓木が京都に帰省するので撮ってきてもらいました!)
また、前述の「沈黙の金曜日」のアシスタントに就任する際に、番組のプロデューサーに言われた「ゼロ回答をしない」や、放送初回にいろいろとメモをしてきた弓木さんに対して、アルピーの平子さんが「まずはそのメモを燃やすことからだな」とアドバイスしたことを実践することにより、そのバラエティ能力を鍛えてきました。
弓木さんは、歌やダンスは乃木坂46の中でも決して突出しているわけではありませんが、今や多くのバラエティ番組などに出演し、必ず爪痕を残すと言ってもいいような活躍を見せています。
「乃木坂46時間TV」内で、ネプチューンの堀内健さんに、同じく乃木坂46の4期生である早川聖来さんが無茶ぶりをされて困っていると、ツイッターで「#助けて弓木奈於」がトレンド入りし、多くの人が「弓木なら何とかしてくれる」と思うほどのポジションを得ています。
それまでにもバラエティに強いアイドルはたくさんいましたが、それは得てして体を張ったり、自虐や毒舌などで下品になりがちですが、弓木さんのバラエティ力は独特なワードセンスによるもので清楚でおしとやかというような「乃木坂46」のブランドイメージを崩すことがないのも素敵なところだと思います。
彼女の発言を聞いていると、一見頓珍漢なことを言っているように聞こえますが、何の脈略もないことを言っているのではなく、彼女なりの論理が通っていることを感じることも多く、例えば、アルピー平子さんの「得るもの2割、失うもの8割」という発言に対し「えっ、セサミストリート?」と反応したり、乃木坂工事中の学力テスト企画では頭NO王(最下位)にも関わらず、学生時代には英語のスピーチコンテストで上位入賞していたり、と、彼女が物事を論理的ではなく音(や映像)で捉えていることからくる言い間違いや聞き間違いが多いのだと思いますし、学校の勉強は得意ではないながらも自頭は悪くはないことを感じます。
また、京都弁で考えたことを標準語に変換するために言い間違い等が生じてしまうという説もあります。
中西アルノさんの音楽的センス
中西アルノさんは2022年2月に5期生として乃木坂46に加入し、同月に行われた「乃木坂46時間TVスペシャルライブ」において、「かつてない歌声」「発見された新しい可能性」「10年目の挑戦」として29thシングル「Actually…」のセンターを務めることが発表され、デビュー当初から、その歌唱力に期待がかかっていました。
同年12月に行われた乃木坂46の5期生が昭和・平成のヒットソングに挑戦する番組「新・乃木坂スター誕生!」(日本テレビ)のライブにゲスト出演したゴスペラーズの黒沢薫さんは、気になるメンバーのひとりに中西アルノさんをあげ「中西アルノさんはレベルが1段違う」と評していました。
2023年12月にCS放送のTBSチャンネル1でスタートした音楽番組「Spicy Sessions」では、ゴスペラーズの黒沢薫さんと中西アルノさんのふたりがMCを務めていますが、番組を始める際に、黒沢さんが中西さんを指名してキャスティングが決まったそうです。
この番組では、毎回1組のゲストミュージシャンを迎え、音楽的ルーツをたどるトークを行い、その話の流れでセッション曲を決め、観覧客を前にバンドアレンジや歌割り、コーラスなどを決めていき、即興でセッションを行います。
これまでのゲストは、平原綾香さん、クリス・ハートさん、根本要さん(スターダスト☆レビュー)、家入レオさん、などなど、本格的なミュージシャンばかりで、このようなゲストミュージシャンやゴスペラーズの黒沢薫さんとのセッションですから、中西アルノさんにも黒沢さんから難易度の高い要求(無茶ぶり)がありますが、その要求に見事に応えています。
中西さんが歌が上手いのは以前から知られていましたが、黒沢さんがその場でアレンジしたハモリを一度聞いただけでセッションで再現したり、歌い方などのアドバイスをすぐに実践したりと、彼女の音楽的素養の高さに驚かされることが多く、中西さんの音楽的な成長も、この番組の見どころのひとつとなっています。
乃木坂46の楽曲では、歌唱する人数が多いことから、必然的に複数人での歌唱(ユニゾン)が多くなり、個人の歌唱力を活かす場面はあまりありませんが、前述した「新・乃木坂スター誕生!」や「Spicy Sessions」では、ソロで歌唱する機会も多く、彼女の歌唱力が大いに発揮されていますし、歌うことが好きなことが伝わってきます。
また、中西さんは、歌を歌う時はクールでカッコいいのですが、乃木坂46の冠番組である「乃木坂工事中」では「どんくさ女王」の称号を得ており、そんなギャップも魅力となり人気を高めています。
(【乃木坂46[井上和・中西アルノ]】 – 君の名は希望 / THE FIRST TAKE)
強みを活かす
弓木さんはバラエティでの活躍、中西さんは歌での活躍で人気を高め、共にアンダーの経験もある中で、最近では選抜の常連になりつつあります。
乃木坂46には他にも、ファッション誌のモデルをきっかけに女性人気を高めた白石麻衣さん、音大に進学しミュージカルなどでも活躍した生田絵梨花さん、ラジオから人気を高めた新内眞衣さんや山崎怜奈さんなど、自分の強みを活かして人気を高めたメンバーがたくさんいます。
秋元康さんが「記憶に残る幕の内弁当はない」と言うように、同じ立場のメンバーが多くいる乃木坂46の中で秀でるには、何か特出したものが必要です。
こちらも同じく、秋元康さんが出演したラジオで言っていたことなのですが、
「昔一番困ったのが『私の何が足りないんでしょう』っていう相談。すごく困る。足りないことを探すんじゃないよ、ってこと。見つかってほしいなって。ファンの皆さんや、マネジャーの皆さんに。心から思いますね。」
苦手なものを克服することも大切なのかもしれませんが、自分の好きなことや得意なものを見つけて、その強みを活かせる環境を得る(作る)ことが重要で、そのためには、それらを発信したり、運営(マネジメント)やスタッフを巻き込んだりすることも必要なのでしょう。
◆乃木坂46に学ぶ人生で大切なこと◆
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