乃木坂46のイメージ
乃木坂46といえば「上品で清楚な女の子のグループ」というようなイメージが一般的だと思いますが、そのようなイメージが定着したのは、そういったメンバーが多くいたということだけではなく、戦略的に計算された様々な施策により構築されてきたものです。
BABY METALの「アイドルとメタルの融合」のようにわかりやすい差別化要素を持つグループもありますが、元々AKB48の公式ライバルとして誕生した乃木坂46は、AKB48と同じく秋元康さんプロデュースによる女性アイドルグループであり、選抜制度やセンターポジションを争うフォーマットも共通しており、AKB48はもとより、他の多くの女性アイドルとどう差別化するかには苦心していたと思います。
初期のころ総合プロデューサーである秋元康さんが乃木坂46のスタッフに「AKBと同じことをしていてはダメだ」とよく言っており、また秋元康さん自身も、乃木坂46の楽曲は、AKB48などとは別の世界観で作詞しているように思います。
グループのブランディング
乃木坂46が「上品」や「清楚」などのイメージを持たれているのは、彼女たちの衣装などによるものも大きな要素となっています。
乃木坂46のメンバーは、おおよそシングルごとに制作される「制服」と呼ばれる統一した衣装を着ることが多いのですが、そのほとんどがロングスカートで、夏場に半袖になることはありますが、肌の露出はかなり抑えられています。
また、靴もハイヒールはなくほとんどがローヒールですし、メンバーの身長の違いがあるにもかかわらず、横に並ぶと制服のスカート丈が揃うように作られているのもこだわりで、清楚感を感じる要素の一つです。
(modelpress 「紅白リハ総まとめ!」)
歌衣装(歌唱時に着る衣装)も、曲によっては曲のイメージに合わせてミニスカートやショートパンツ、おなかが見えるものなどはありますが、多くはロングスカートで、そのロングスカートをなびかせるしなやかなダンスが乃木坂46の特徴の一つとも言えます。
髪色も多くのメンバーは黒髪で、染めるにしても濃い目の茶系ぐらいで、ネイルやアクセサリーなども派手なものは着けず、メイクもナチュラルなものになっていて、これらは運営からの指示によるものでしょう。
卒業後ですが、1期生の松村沙友里さんがテレビ番組に出演した際に
アイラインの長さ、濃さ、太さが決まっていて、ナチュラルにということで、まつげのちょっと内側ぐらいまで。
これ以上長くすると、マネージャーさんが飛んできて「消してください」って言われます。
(TBS「有田哲平とコスられない街」)
と述べています。
また、多くの女性アイドルが雑誌などで水着でのグラビアが掲載されているのに対し、乃木坂46は自身の写真集以外では水着姿を見せることはなく、多くのメンバーがファッション雑誌の専属モデルを務めていることも乃木坂46の大きな特徴となっており、これにより多くの女性ファンを獲得しています。
乃木坂46がデビューした当時の女性アイドルグループの中心だったAKB48やモーニング娘などは、短いスカートのフリフリ衣装で、笑顔全開、元気いっぱいのキャピキャピした感じでしたので、こういった取り組みにより、それらとは明確な差別化ができました。
メンバー個人のブランディング -池田瑛紗さん-
5期生の池田瑛紗さんが乃木坂46のオーディションを受けたのは、憧れであった東京藝術大学進学を目指して浪人をしていた時で、オーディションに合格したときは藝大進学をあきらめようと思っていたそうですが、スタッフから「あなたが挑戦していることは、この先あなたにとって絶対にプラスになる。だから受験はやめなくて大丈夫です。」と言われ、アイドル活動と並行して受験勉強を続け、2023年3月に自身のブログで、東京藝術大学に合格し進学することを公表しました。
東京藝大は芸術系大学の最高峰で入試難度も高く、芸術分野や芸能関係で活躍する卒業生は多くいますが、現役アイドルの合格は異例とも言えます。
池田さんは現役藝大生という特性を活かし、アートバラエティー番組「小峠英二のなんて美だ!」(TOKYO MX)のMCを始め、企画展「笑うアートマンションと10人の住人展」での作品展示及びアザービジュアル作成、渋谷芸術祭2023にアーティストとして参加、配信番組「乃木坂、逃避行。」のキービジュアル作成など、芸術関係の仕事も多くこなしています。
藝大合格を公表した自身のブログでは、「私が選んだ人生の選択肢が乃木坂46の可能性を広げることに繋がると信じて前へ進んでいきたいと思います。」という思いを述べており、また公表した理由としては「事を続けていくにあたってとても大きなことだと思ったからです。スタッフさんと相談させていただいて決めました。」と説明しており、今後もこの経歴を活かした仕事を多く行っていくことでしょう。
一度はあきらめようとしていた藝大受験ですが、スタッフの助言もあり見事合格し、現役藝大生アイドルという唯一無二のポジションを獲得したことは、まさしく彼女を特徴づける大きなブランディングと言えます。
メンバー個人のブランディング -齋藤飛鳥さん-
東京の下町で日本人の父親とミャンマー人の母親のもとに生まれた齋藤飛鳥さんは、13歳の時に乃木坂46の1期生最年少として加入しました。
1stシングルでは選抜メンバーに選ばれましたが、2ndと3rdシングルではアンダー、4thシングルでは選抜になりましたが、5thでは再びアンダーとなり、そこからしばらく、多くをアンダーメンバーとして活動しました。
その頃の齋藤さんは、ニックネームは「あしゅりん」、好きな食べ物は「いちごみるく」で、自分が見てきたような、かわいらしい王道アイドルになるべく振舞っていましたが、いつの日からか、自分の本来の姿とは大きく乖離した王道アイドル像を装うのをやめ、本人曰く「根暗」で、人と群れることを避け、時に毒舌を吐くようなキャラクターを表に出すようになりました。
超小顔で幼い顔立ちも、毒舌とのギャップを感じさせ魅力となっていて、そうした飾らない感じが支持され、次第に人気を高め、11thシングルで久々の選抜メンバーとなると、15thシングルでは初めてセンターを任されるまでになりました。
清楚で上品なメンバーが多くいるグループの中で、それが本人の素に近かったのかもしれませんが、見た目とはギャップのある「独自の世界観を持った毒舌キャラ」のようなポジショニングを確立できたことが、飛躍のきっかけになったと思います。
このようなキャラクターの彼女が、これほどまでに人気を得たのは、単に「毒舌を吐くニヒリスト」という感じではなく、毒舌ではあるもののその言動に嫌味はなく、素直でかわいらしい面が多々あったからだと思います。
また、乃木坂46やメンバーに対する大きな愛を感じられる言動も多く見られ、乃木坂46の創成期を共に過ごした同期の1期生や2期生の卒業が相次ぎ、3~5期生の後輩がグループの中心となるころには、決して人づきあいが得意ではないながらも、3期生の大園桃子さん、4期生の遠藤さくらさんなどに寄り添い、エースとして活躍しつつ後輩を支える役目も担いました。
彼女の卒業コンサートを見れば、彼女がいかに後輩たちに尊敬され愛されていたのかがよくわかりますし、我々には見えないところで後輩たちとコミュニケーションを取っていた証だと思いますが、そういった部分は、意図的にファンには見せてこなかったのは彼女なりのブランディングだったのでしょう。
ブランディングとは
ブランディングとは、商品などの独自性を定義し、そのイメージを構築し管理するプロセスで、商品やブランドの価値を高め、お客様や世間に自分たちを「独自のもの」として認識してもらい、他と差別化を図る取組です。
女性アイドルにおいても大切にする何かがあるのとないのとでは大きく違ってきます。自分たちは何を大切にしているのか、しっかりとメッセージを発することが必要です。
◆乃木坂46に学ぶ人生で大切なこと◆
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